中西輝政「創刊の辞 ―情報史学の発展をめざして―」

就職後、色々あって久々の更新です。

blogの更新途絶期間に、情報史の分野では大きな動きがありました。情報史研究会が機関紙『情報史研究』を創刊したことです。
(そういえばまだ『史学雑誌』の研究動向読んでない・・・)

「創刊の辞」で中西輝政氏が明示した情報史研究会の方針は以下。

情報史研究のアイデンティティ

  1. 情報史とは、情報史資料(情報組織の文書、またはそれへ直接言及した文書)を主要な根拠として歴史の過程を明らかにしようとする研究
  2. 情報機関とその活動、及びそれ自体の歴史的な変遷についての、学問的アプローチに基づく理解(前提)
  3. 歴史的なアプローチに徹することによる、学問としての中立性と客観性の確保
  4. 「インテリジェンス・リテラシー」を効果的に普及するための、歴史的な見地からの説明

情報史研究会の運営原則

  1. 内外政府機関と関わらないこと(助成を受けない、政府関係者の入会・寄稿は受けない)
  2. 公開された情報・資料しか取り扱わない
  3. 歴史研究に徹して政策には関与しない

ちょっとした疑問

慎重に慎重を重ねた原則ですが、少しだけ疑問が。

小谷賢氏は情報史の分野で業績のある方で、昨年には中西氏と共著『インテリジェンスの20世紀―情報史から見た国際政治』を発表されています。おそらく中西氏の教え子。
そのことは情報史研究会のサイトにも「2008年 会員による共著を出版。」と記されています。
しかし、小谷氏は現役の政府関係者(2008年は防衛省防衛研究所戦史部教官。現在は英国留学中)です。
これって、会の精神に反していないんでしょうかね……? 別に杓子定規に規則を当てはめるわけではないですが、人間関係によって例外が作り出されるというのは組織としては致命的だと思うのですが、どうなんでしょうかね。おそらく会員が政府関係者になってもそのまま会員を続けているだけなのでしょうけれど。

期待

創刊号は海外関連で記事が埋め尽くされていますが、第二号以降で日本関連の記事が読めることを期待しています。
私も個人的に明治初期の日本の情報活動を追ってみたいと思います。