村上勝彦「隣邦軍事密偵の兵要地誌」

間があきました。
ゼミでの発表と定期試験とバイトで忙しかったので……ちまちま続けたいと思います。

朝鮮地誌略〈1〉京畿道.忠清道.咸鏡道 (1981年)

朝鮮地誌略〈1〉京畿道.忠清道.咸鏡道 (1981年)

村上勝彦「隣邦軍事密偵の兵要地誌」
      (参謀本部編『朝鮮地誌略』1,竜渓舎,1981,復刻版への解題. 原書は1888)


おそらく現在までで最も詳細な、陸軍(参謀本部)の大陸における情報収集に関する先行研究。
村上氏は、陸軍の清国情報収集網の推移を3段階に分けた。


初期の密偵(1872〜1878)

情報の要求に応じた派遣。征韓論台湾出兵など。

隣邦密偵体制の確立(1879〜1883)

参謀本部発足。清国各地への将校駐在型。管理将校+駐在将校、派遣前の学習などシステマティックに行われる。

隣邦密偵体制の再編成・縮小(1884〜1889)

清国派遣の縮小・アジア他地域への派遣から、駐在将校の廃止へ(公使館付武官のみ)。



朝鮮地誌略への解題であるため、朝鮮での密偵の動き、そして参謀本部の地誌刊行の状況についても記されている。
村上論文が重要なのは、軍令機関の変遷と「密偵体制」の推移をあわせてみているところと、この分野における最初で最大の先行研究である、というところだろうか。